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肝機能障害

肝機能障害とは、何らかの原因で肝臓の機能が低下した状態です。肝機能が低下すると血液検査で肝臓の機能の指標となるAST(GOT)、ALT(GPT)、ɤGTPなどの数値が高くなります。健診や人間ドックで肝機能障害を指摘された方は多いでしょう。肝機能障害を引き起こす原因は様々であり、その発症の仕方も異なります。代表的な肝機能障害は、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝臓がんなどがあります。

肝機能の指標となる検査値名 基準値
AST (GOT) 8~38 IU/L
ALT (GPT) 4~43 IU/L
γ-GTP (γ-GT) 男性:86 U/L以下 女性:48 U/L以下

肝機能障害の原因

脂肪肝

脂肪肝とは肝臓に中性脂肪がたまった状態です。肝脂肪の人の肝臓をエコー検査でみると肝臓の中に脂肪が白く点のように見えます、肥満やメタボリックシンドロームに合併しやすく、放置すると肝臓の組織を壊し、肝炎を引き起こします。しかし、脂肪肝は健康診断や人間ドックで肝機能の異常値を指摘されるまで気づかないことも多く、自覚症状がない人がほとんどです。

 

アルコール性脂肪肝

多量飲酒が原因の脂肪肝です。アルコールが肝臓で分解される時、中性脂肪が一緒に合成されるため、肝臓内に脂肪が蓄積します。

 

非アルコール性脂肪肝

飲酒の習慣がない人でも肥満や運動不足などによってインスリンの働きが低下し、血液中の多量の糖分が中性脂肪に変わり、肝臓内に脂肪が蓄積します。

 

 肝炎

肝炎とは、肝臓の炎症(身体・組織をウイルス、細菌などから守るための防御反応)であり、その炎症によって肝臓の肝細胞が壊れてしまった状態です。肝炎の原因は、ウイルス感染や生活習慣など様々です。

 

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、その名の通り肝炎ウイルスに感染し引き起こされます。肝炎ウイルスは、A型、B型、C型、D型、E型などのタイプがあり、それぞれに原因や症状が異なります。また、A型、E型は慢性化しませんが、B型、C型肝炎は慢性化し、重症化することもあります。

①A型肝炎

主な感染経路は、A型肝炎ウイルスなどが付着した食品(牡蠣が代表的)や水などを摂取することによる経口的感染です。東南アジアやインドなど、不衛生な地域で感染することが多いとされてます。潜伏期間は平均4週間ですが、感染期間はウイルスが便に排泄される発病の3~4週間前から発症後数か月までと長い期間、周囲の人へ感染を広げるリスクがあります。主な症状は発熱、全身倦怠感、食欲不振で、黄疸、肝腫大などが代表的です。治療は、基本的には安静にして自然治療を待ちます。予後が良く、慢性化することはまれです。

 

②B型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスに感染した人の血液に触れる血液感染、体液に触れる性交渉など、B型肝炎ウイルスに感染している母親から出産・授乳を介して感染するケースがあります。急性B型肝炎は、感染してから1~6ヶ月の潜伏期間があり、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などの症状が現れます。症状が激しい劇症肝炎となり死に至ることもあります。慢性B型肝炎は、肝硬変や肝臓がんに移行し命を脅かすこともあります。治療はウイルスを減少させるインターフェロンやウイルスの増殖を抑える核酸アナログ製剤の内服治療が行われます。

 

③C型肝炎

C型肝炎は、C型肝炎ウイルスが混入した輸血、血液製剤やウイルスが付着した注射器の使い回しなどによって感染します。急性C型肝炎を発症した場合、60~70%の人はキャリア(体内にウイルスを保持した状態)となり慢性C型肝炎に移行し、そのうち10~16%は平均20年ほどの長い時間をかけ肝硬変となると言われます。肝硬変から肝細胞がんに移行するケースも少なくありません。治療は直接型抗ウイルス薬を服用します。

 

④ E型肝炎

E型肝炎はアジアの開発途上国で流行した例があり、E型肝炎ウイルスに経口感染することで引き起こされる急性肝炎です。日本では豚・イノシシのレバー、シカ肉の生食からの感染例があります。治療は、各症状を抑える対症療法です。

 

アルコール性肝炎

アルコール性肝炎は多量飲酒が原因となり引き起こされる肝炎です。多量飲酒をしたすべての人に起きるわけではなく、長期間、常習的に大量の飲酒を続けている人に発症する傾向にあります。アルコール性肝炎の症状は、食欲不振・だるさ・発熱や肝臓がある右上腹部に痛みが出ることもあります。黄疸や紅茶色の尿なども特徴的な症状です。治療は、禁酒と安静ですが、症状が重い場合には入院治療を行うこともあります。

 

非アルコール性脂肪性肝炎

非アルコール性脂肪性肝炎は、過食・運動不足から起きる肥満(特に内臓脂肪型)・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病に合併した脂肪肝から肝炎を発症します。放置すれば肝硬変、肝臓がんへと移行する可能性もあります。治療は、食事療法、運動療法などの生活習慣の改善を行い、生活習慣病の治療も行います。

 

 自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎とは、本来、体を守るべき免疫システムに異常をきたし、自分の肝臓の細胞を異物と認識し攻撃し壊してしまうために起きる肝炎です。自己免疫性肝炎については分かっていないことも多く、難病に指定されています。治療は、ステロイド剤などの免疫を抑える薬を使用します。

薬剤性肝炎

薬剤性肝炎とは、医薬品やサプリメントが原因となり起こる肝臓の炎症です。 医薬品やサプリメントの成分が原因となる場合と、医薬品やサプリメントが肝臓で代謝されてできた代謝産物が原因となる場合があります。治療は原因薬剤の中止と必要に応じてステロイド剤や抗アレルギー剤などの薬を使用します。

 

肝硬変

肝硬変とは、慢性化した肝炎が徐々に進行し肝臓が硬くなった状態をいいます。慢性肝炎によって肝細胞が壊れると、その代わりに繊維組織が増えて肝臓が硬くなり、肝臓の機能が著しく低下します。肝硬変になると肝機能が低下することで、タンパク質の血液中の濃度が低下し、むくみや腹水が溜まるなど様々な症状が生じます。また、肝硬変に伴い、肝臓の解毒作用が低下するとアンモニアなどの有害物質の血中濃度が上昇し、脳機能の低下を引き起こし、肝性脳症と呼ばれる状態になり、意識が朦朧とすることもあります。

 

 肝臓がん

肝臓がんは、肝臓から発生する「原発性肝臓がん」と他の癌が肝臓に転移し発生する「転移性肝臓がん」の2つのタイプがあります。肝臓がんは転移性がんから発生するケースが多く、原発性肝臓がんの4-10倍と言われます。
肝臓がんの原因は、B型やC型肝炎ウイルスの感染による慢性肝疾患からの移行が原因の約80%を占めています。しかし、近年では抗ウイルス薬により肝炎ウイルスを体内から排出できるようになったため、今後はウイルス性肝炎が原因の肝臓がんは徐々に減っていくと予想されます。

 

肝機能障害に伴う検査

 採血検査

採血検査では、肝機能を示す項目、胆嚢に異常がないか、肝炎ウイルスの感染の有無などを詳しく調べます。また肝臓がんを疑う場合は、肝臓がんの腫瘍マーカーの値も測定します。

腹部超音波検査(腹部エコー検査)

腹部超音波検査(腹部エコー検査)では肝臓の状態を詳しく調べることができます。脂肪肝などは、自覚症状に乏しい傾向にありますが、エコーでは脂肪が白く映ります。肝硬変では肝臓の周囲に凹凸が出てきます。肝臓がんもエコーで指摘できる場合があります。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

 

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は肝機能が悪化した時や肝硬変がある場合には行った方が良い検査です。肝機能が、十分に働けてない状態では、胃や食道に静脈瘤がみられることがあり、静脈瘤が破裂し大出血する可能性があります。

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)

肝臓に癌を疑った場合は、大腸がんからの転移性肝臓がんである可能性を考慮にいれます。
大腸がんの確認や否定には下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)が必要不可欠です。

 肝機能障害の予防・改善

肝機能障害を引き起こす原因にはアルコールや生活習慣、肝炎ウイルスがあることがお分かりいただけたと思います。肝機能障害の予防・改善には、アルコールは適量を心がけ、休肝日を設けることが大切です。ウイルス感染では、感染経路を遮断することが重要であり、その中でもA型、B型肝炎ウイルスでは『性交渉』によっても感染することがあるということに留意してほしいと思います。また、肝機能障害に合併しやすい肥満や生活習慣病の予防も重要です。バランスの取れた食生活と適度な運動、十分な食事を基本とし、定期的な検診が肝機能障害を初期の段階で発見、予防・改善する最善の策といえます。

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